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人は強制しないと働かない?管理者を目指す人にマストな「XY理論」

人を管理すべき立場になったとき、今までとは違う状況に誰もが戸惑うはずです。右も左もわからない状況に陥ったときは、自己流でむやみに進むのではなく、先人たちが残してくれた理論を少しずつ知っていくのが有用です。まだ管理者でなくとも、勉強したいと思ったタイミングで勉強しておきたいのがマネジメントについて。今回は、管理者や経営者が部下とどのようなマインドで接していくべきかのカギとなる理論のひとつをご紹介します。

心理学者が提唱した「XY理論」

人間を示す考え方のひとつに、人はもともと良い性格の生き物だとする性善説と、人はもともと悪い考えを持つ生き物だとする性悪説があります。アメリカの心理学者であるダグラス・マグレガーは、人の仕事に対する向き合い方を「X理論」「Y理論」の二つに分ける概念を提唱しました。

仕事への向き合い方「性善説」【X理論】

X理論「人間とは本来怠け者であり、強制されたり監視や処罰がなければ仕事をしない

仕事への向き合い方「性悪説」【Y理論】

Y理論「人間は本来、自己実現のために仕事をしたいと思っている生き物であり、条件が整えば、自ら進んで仕事をする

X理論・Y理論が通用する人、しない人

人間は本来怠け者で、強制しないと仕事をしないと考えた「X理論」は、安心安全に衣食住ができている方には通用せず、これからの時代は個人の自己実現をサポートする「Y理論」が必要であると述べています。

物や情報であふれ、安心安全に衣食住ができている現代の多くの方には、強制的に監視や処罰をして仕事をさせる必要はあまりないと言い換えることもできそうです。

X理論、Y理論は共存すべきもの

では、自己実現のためにサポートして適切に条件を整えて自ら仕事をさせるY理論が主役になっていくだろうと思うところですが、X理論とY理論は現代も共存させるべきものであるとされています。

まず、厳しめに仕事をさせる感覚であるX理論は、他者ではなく自分自身に適用すべきことで、基本的なことも習得できていないのに自己実現をサポートするための条件を整えるY理論を謳うのは甘いという考えがあります。

人の管理には「X理論」も「Y理論」も不可欠ですよという現実把握が上手なマネジメントのコツということですね。やはり、何事にもバランスが重要で、甘いだけでも厳しいだけでもいけないのだと言えます。

(参考文献)「ビジネスでいちばん大事な「心理学の教養」

心理学は、人材育成からマーケティング、マネージメントに至るまで、強力なパワーを持ったツールです。敵を制すには敵を知ること。敵ではないにしても「人」の基本的な事実を知る学問であるため、生きづらさのようなものを軽減できる効果もあります。

<ご注意>XY理論は「人が自発的に仕事をするかどうか」

組織には、働く上での根本的なルールである就業規則や給与規定、諸規定など、様々なルールがあり、その上で成り立っています。労働基準法等、法律によって設定されているルールも多くあるため、ルールや適切な監視や管理は安心安全に組織を運営する上で絶対的に必要なものになっていると言えます。XY理論は、あくまで「自発的に仕事をするかどうか」という論点の話です。

厳しい管理やマネジメントが必要ないという意味でも、条件さえ整えてあげれば放っておけば良いのだという意味でもありません。人の性質を示すひとつの概念として頭に入れておくと役立つ知識となります。

Y理論・自己実現のサポートのためにできる条件とは?

どうすれば組織にいる方々の自己実現のサポートができるでしょうか。また、どうすれば社員、取引先、エンドユーザーやその家族といった社内外のネットワークにいる方々が幸せになるでしょうか。

以下はY理論を元に考えた持論です。ひとつの例として、あなたなりの条件設定について考えてみてください。

例1 管理ツール

たとえば、日報管理や行動管理、評価表など、人を管理するために使われているツールはたくさんあります。しなければいけないからするのではなく、目標達成や自己実現のためにどう使うのか、不必要な項目はないかなど、「自己実現のサポート」を中心に考えてみる時間をつくってみてください。その際に見えてくる「管理ツールの重要性」や「管理の仕方の改善」について考えると新たな道筋が見えてくることがあります。

例2 時間管理

タイムマネジメントにしてもそうです。世界に目を向けてみると、日本の労働生産性は確実に低いという結果が出ているのは有名なお話です。古くから続いてきた洗脳がないか俯瞰してみてみましょう。長時間労働をすることで幸せになるのだと発言している社長様にお会いしたことがありますが、その考えはバランスの観点でいうと偏っています。

世界は確実にバランスで成り立っています。長時間労働で幸せになる人もいれば、そうでない人もいる。本当に当事者の声を聴いての事実なのでしょうか、また、なぜその考えに至ったのでしょうか。そこにデータや事実を加味できていない思い込みはないでしょうか。

自己実現サポートのための条件設定には傾聴が欠かせない

現場にいる方々は、物事の間違いに気づきやすい特徴があると考えます。お客様は物を買うときに「A」という過程がなければ良いとおっしゃっている。よく考えると、お客様にも自社にとっても「A」は本当に不要なものだと気づく場合があります。

反対に、現場から離れて管理に重きを置いている人物から見ると、現場でやっている「B」という作業がなくても問題ないという事実が見えてくることもあります。

つまり、あらゆる立場の声を聴くことが、自己実現サポートのための条件設定には欠かせません。

条件設定時は不要なものがないか確認を

自己実現のサポートのためにできる条件を設定するのが「Y理論」ということでした。ただ、条件を設定し続け、すべての条件を守ってもらうことはできません。何かを増やすときは、まず減らしたり代替できることがないか考えてみましょう。上記のように、不要なものはなくし、よりよい条件を設定していくことで、組織がよりよくなっていく様子は想像に容易いことだと思います。

まとめ

X理論、Y理論を深く知るには、提唱者ご本人による著書の読了が最も効果的です。以下にAmazonへのリンクを貼らせていただきます。

ダグラス・マグレガー著『企業の人間的側面-統合と自己統制による経営』

「50年も前の著書であっても、現在でも通用する内容である」「研修でよく使っている」「社員に自分の子供もここで働かせたいと思わせる企業の経営層は記載内容に沿った考えをしている」といった口コミも見られます。長く読み継がれる価値ある書籍であることが伺えますね。